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◆リトル・アリスの “戦記” (WlW文芸部)

by
ルイマル
ルイマル
a shadowed bishop (Through the looking-glass, and what ALICE found there)

 
 
執筆予定の『Rain above the Sky: Forbidden ALICEより
……という設定で()


人物紹介 ※内容にはあまり関係ない

   PLEASANCE (BIG ALICE)
   プレザンス (ビッグ・アリス)
{恐るべき子供たち計画}によって生み出されたキャスト
身体も精神もアリス・リデル自身のものだが、洗脳による「戦士」としての自覚とそれに伴う運動能力・戦闘技術を身につけさせられ、潜入任務の遂行にあたった。〈【
地下の国のアリス】〉
今回はルイス・キャロルからの依頼に応じて作戦に参加している。
身体は地下の国でのアリス・リデルと同じで、精神は晩年のアリス・ハーグリーヴズのもの。ただ身体の影響か、精神年齢や言葉遣いが若返っている。
ロリババア
能力や技術は残されているが、洗脳は残っていない

   SHADOW ALICE
   シャドウ・アリス

装備/健康管理を担当。プレザンスと同じ"ALICE"



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(Trr...Trr...)


PLEASANCE
「回収したリトルの調子はどう?」
 SHADOW
[すこし精神がまいってるみたいだけど、
 それ以外は問題ないにゃ]
PLEASANCE
「分かった。とにかく無事でよかったわ」
 SHADOW
[ええ、そうね、よかった。本当によかった……]
PLEASANCE
「正直に嬉しそうね。らしくないんじゃない?」
 SHADOW
[……大切なひとだから。
 あの子以上に大事にしたいものはないの]
PLEASANCE
「姉妹みたいだものね」
 SHADOW
[いや、わたしたちはそれ以上のもので繋がってる。
 共に戦い、励まし……殺しあった仲]
PLEASANCE
「殺しあった?」
 SHADOW
[そうよ。あの子、話してなかったのかな?
 わたしあの子……リトル・アリスに一度殺されたの]
PLEASANCE
「そんな話は初めて聞いたわ。というより、
 あなた達についてほとんど知らないのよね。実は」
 SHADOW
[……知りたい?]
PLEASANCE
「ええ」
 SHADOW
[……………それじゃ、教えてあげよう。

 まず西暦1859年、当時7歳だったあなた
 {恐るべき子供たち計画}の被験体に選ばれた。
 現実の姿に似せた"身体"を与えられ、
 特殊部隊の隊員として訓練を受け、任務に就いた。
 そして見事に地下の国を『闇』の脅威から救い、
 重傷を負った"身体"と記憶を残し去っていった]
PLEASANCE
「そのの遺した身体、技術、そして記憶。
 それらのデータを基にあなたたちが造られた。
 
 知ってる情報はここまでね。
 そもそもシャドウ、あなたの名前も
 作戦のブリーフィングで初めて知ったのよ」
 SHADOW
[ふうん……じゃあ、そこから続けるね。
 
 わたしたち二人は3年間、
 同じ施設の中で同じ訓練を受けた。
 あの子とは仲が良かったんだよ。
 唯一の友であり、無二のライバル。
 ……思えば、あの時が一番幸せだったかもね。
 何も考えずに笑い合えるひとがいた。
 あの子だけしかいなかったけど、
 あの子だけで十分だった。]
PLEASANCE
「そんな唯一無二の親友と、
 なぜ殺し合うようなことに」
 SHADOW
[それが運命だったから]
PLEASANCE
「運命?」
 SHADOW
[そう。……わたしたちが生まれた時、
 それはすでに仕組まれていた。
 『Agent Alice Again』……
 わたしたちを造った『A3計画』。
 ビッグ・アリスから生まれたわたしたちに、
 ビッグ・アリスと同じ道を辿らせ、
 ビッグ・アリスを再臨させるための、
 第二の{恐るべき子供たち計画}。]
PLEASANCE
「『ビッグ・アリス』、ね」
 SHADOW
[不思議の国で起きた争乱は、
 全て地下の国での戦いを再現するための
 〈演習〉にすぎなかった。]
PLEASANCE
「演習……         Jack
 あなた達の殺し合いも、と王子の
 別れを元にした再現だった、と?」
 SHADOW
[王子、か。聞いたよ……あなたは
 そっちの世界でも、相思相愛だった
 王子と離れ離れになったそうね]
PLEASANCE
「……その話は、やめて。
 続きをお願い」
 SHADOW
[ごめんなさい、続けるね。
 そう……わたしたちは試されたの。覚悟を。
 かつての親友の命を奪ってでも、
 任務を達成し、生きて還るという、強い意志。
 ……撃てなかった。
 殺されると知っていながら、それを選んだ。
 あの子に重荷を押し付けてしまった]
PLEASANCE
「………狂ってる」
 SHADOW
[そうね。正気じゃない。
 それでも計画を阻止することは出来なかった。
 誰も止めなかったわけじゃないんだよ、
 ヘイヤにハッタ……覚えてる?]
PLEASANCE
「三月ウサギと帽子屋でしょう。お茶会にいた」
 SHADOW
[彼らは計画を頓挫させようとしていたの。
 でもそれがバレてしまって……捕えられた。
 話によれば、工作は成功目前だったとか]
PLEASANCE
「『壊れた時計』『最高の"バター"だった』
 ……あれはそのことだったのね」
 SHADOW
[いや、ごめんなさい。
 そんなこと言われてもって感じだよね。
 
 わたしはあの子に負けて亡き者となった。
 でもね、死んだはずのわたしは
 再び目を覚ましたの。霊体となって]
PLEASANCE
「霊体?
 魂だけ……ということ?」
 SHADOW
[おそらくは。
 魂にしか触れないし、魂しか口にできない。
 『スナーク』って呼ばれる状態みたいね。
 とにかく、わたしという存在は消えずに残った。
 そう……わたしたち2人のアリスの物語は
 まだ、まだ終わってなかったの。
 西暦1866年、
 人魂を食べて暮らしていたわたしに
 1人の男が仕事を依頼してきた。
 内容は、『鏡の国』でリトル・アリスを護衛、
 および男の計画通りに彼女を誘導すること。
 男の名はラトウィッジ……
 つまりルイス・キャロル本人だった]
PLEASANCE
「……!」
 SHADOW
あの人は、あの子を戦争から引き離すために
 ちょっと遠回りな計画を立てていたの。
 本来は『鏡の国』で秘密裏に造られていた
 ヴィランを倒すための作戦だった。でもあの人は、
 この戦いをチェスゲームに仕立てることで、
 あの子の心を呪縛から解放しようとした]
PLEASANCE
「チェス盤には意味があったのね!
 ……あれ、でも待って。
 あのチェスの手順はルールに従っていないよね?
 ということは、ゲームとして成立しないのでは」
 SHADOW
[ふふ……実はちゃんと従ってるんだよ]
PLEASANCE
「どういうこと?」
 SHADOW
[あのチェスはきちんとルール通りに成立してる。
 ただ、赤の駒が一つ、見えないだけ]
PLEASANCE
「??」
 SHADOW
[とにかく、わたしはその依頼を受けた。
 護衛といっても、別行動が多かったけどね。
 捕らわれていた三月ウサギと帽子屋も救出して、
 本来の目的であるヴィランも破壊し、
 全てラトウィッジの計画通りに進んだ。
 あの子も……巻き込まれる形で戦ってたんだけど、
 すこしずつ普通の感情が戻っていった……。
 多少は効果があったみたい。不思議なものね]
PLEASANCE
「どうして効果があるってわかったのかな」
 SHADOW
[実は本人もわかってなかったみたい。
 ある種の願掛けみたいなものだったって]
PLEASANCE
「……論理学者が願掛け、ねえ」
 SHADOW
[きっと、手段を問わないほどに
 救いたい気持ちが強かったんだと思う。
 あの人には感謝してる]

PLEASANCE
「それで、『鏡の国』のあとはどうしてたの?」
 SHADOW
[しばらくは平和だった。
 変な世界だけど、それなりに楽しんでたよ]
PLEASANCE
「しばらくってことは、また何か起こったのね」
 SHADOW
[ええ。1934年のことよ。
 チェシャ猫がとある極秘情報を掴んだの。
 ラトウィッジと関係のない『名無しの国』で
 新たな"ALICE"が創られようとしている、と。
 現実世界でのもう一人のアリス、
 アリス・オブ・オールバニを無理やり
 {恐るべき子供たち計画}の被験体にしていたの]
PLEASANCE
「そんなことが可能なの?
 そのときはもう子供ではなかったでしょう」
 SHADOW
[さあ。研究段階で計画を潰したからね]
PLEASANCE
「それに、名無しの国なんて童話は聞いたことない」
 SHADOW
[そりゃあ、そんな童話はないからね。
 この作戦は"戦記"として残されていないんだよ。
 抹消された、と言うほうが正しいかも]
PLEASANCE
「消えた歴史か。
 それにしても、1934年ね……」
 SHADOW
[あなたが天命を全うした年。
 計画に使うため、死の直前だったあなたは
 『名無しの国』へと呼び出された。
 そして、あの子に会った]
PLEASANCE
「その作戦のときだったのね、あれ。
 驚いたなあ。昔のわたしにそっくりの子供が
 変な恰好をして目の前にいるんだもん」
 SHADOW
[ねえ。あの時、あの場所で、
 あの子と何を話したのか……教えてくれる?]
PLEASANCE
リトルは話さなかったの?」
 SHADOW
[聞いても教えてくれなくてね。
 あーあ、わたしも会いたかったなあ]
PLEASANCE
「今こうして話してるんだからいいでしょ」
 SHADOW
[で、なにを話したの]
PLEASANCE
「……まずはリトル・アリスの方が
 自身のことについていろいろと語ってくれた。
 から創られた存在だということ、
 戦士として今まで戦ってきたこと、
 そしてもう一人の片割れがいたことを……。
 殺したとは言わなかった。きっと配慮したのね」
 SHADOW
[……うん]
PLEASANCE
「そのあと、私はこう伝えたわ。
 かわいいリトル・アリス
 どうか戦場から離れてほしい
 これ以上、犠牲を増やさないでほしい
 与えられた命を大切にしなさい
 少女らしく元気に生きなさい
 あなたと、その亡くなった片割れを、
 大切な『娘』として愛している……と」
 SHADOW
[………]
PLEASANCE
「……戦争で、息子が2人死んでるのよ。
 だから、なによりも戦ってほしくなかった」
 SHADOW
[………]
PLEASANCE
「シャドウ?」
 SHADOW
あの子ね、今は記憶を無くしてるんだよ]
PLEASANCE
「え?」
 SHADOW
[『キャスト』にされてから急に明るくなったの。
 明るいというか、子供っぽい感じで。
 もしやと思っていろいろ聞いてみたら、
 過去のことはほとんど覚えてないみたい。
 というか全然違うことを言い出すんだよね。
 ……多分、書き換えられたんだと思う。]
PLEASANCE
「よく分からないけど、
 あの子のことを覚えていないのね」
 SHADOW
[うん……じゃあなんでわたし
 まだ記憶があるのかっていうとわからないけど]
PLEASANCE
「………」
 SHADOW
[すっかり人が変わっちゃっても、
 それでもわたしの大切なひとには変わりないの。
 記憶なんて関係ない。ずっと良い友達でいたい。
 ……ねえ、アリス?]
PLEASANCE
「何?」
 SHADOW
[わたしのこと、今でも好き?]
PLEASANCE
「もちろん。大事な娘だもの」
 SHADOW
[そう……そうなんだ]
PLEASANCE
「ありがとう、シャドウ。
 おかげで娘のことについて知ることができた」
 SHADOW
[わたしも……プレザンスのことが少し、分かった]
PLEASANCE
「それは良かった」
 SHADOW
[まあわたしたちのこともいいけど、
 任務のことも……よ・ろ・し・く♪]
PLEASANCE
「了解。いや、りょ~か~いにゃん♪かな」
 SHADOW
[ちょっと伸ばしすぎだにゃ~?]
PLEASANCE
「おやおやそれは失礼した、子猫ちゃん」
 SHADOW
[じゃーにゃー]


{End of Communication}

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Trr...Trr...



「おや、君か」


「本当かい!よかった、童話を読むだけの余裕はあるんだね」


「そうか、安心した」


「僕は大学講師だよ?数学にはちゃんと身を入れてるさ」


「写真は、そろそろやめにしようと思っているんだ」


「心残りはない。ただ君たちを撮り損ねたことは少し後悔してるかな」


「だから、そういう趣味はないと言ってるだろう」


「……『スナーク』になってから変わったな、君は。前はもっと真面目で、すこし臆病な性格だった。それとも『自分』を守ろうとしているだけかい?」


「まあそんなことより、本の感想を聞かせてくれよ」


「ああ、そのキャラクターは【マザーグース】っていう童謡集から持ってきたんだ。だから、あの子は会ってない」


「その双子も【マザーグース】から。あと、ライオンとユニコーンも」


「君は知らないだろうけど、こっちではすごく有名なのさ」


「ごめんよ、でも『アリス』を二人も出してしまうと混乱の元だから。それに、君の痕跡は一応残してある」


「冒頭のチェス盤を見てくれ。なにか気づいたことは無いか?」


「ヒントは駒だ」


「その通り、鋭いな。チェス盤に唯一存在していないビショップ……それが、君だ。それと、チェスの手順にも君の影がある」


「手順の中で、白側が2回続けて駒を動かしている所があるだろう。それは赤のビショップを動かしたのを消した跡なのさ」

 影の世界         〚おにさんこちら!〛
「黒のマスにしか存在できず、ある程度の自由な移動ができる……君にぴったりの配役だと思うよ」


「お褒めにあずかり光栄の極み……っと、誰か来たらしい。少し失礼するよ」





「また君か」


「何度来ても同じだぞ。あの2人を渡すつもりはない」


「脅しに来たというわけか?」


「まさかアリスに……」


「そうまでして戦争ごっこがしたいのか!」


「……もう帰ってくれ。帰って『キャスト』とやらを訓練してあげたらいい」


「さようなら、グリムさん。二度と顔を見せるな」





「失礼、戻ったよ」


「聞こえていたか……君達2人を再び戦いの場に連れ戻そうとする連中がいる」

                   Dream Eater
「元はといえば僕が全ての元凶だ。僕があの『実験』に手を出していなければ、こんなことは起こらなかった」


「この年になると後悔ばっかりだよ。人間というのはそういうものなのさ、きっと」


「ダメだ。僕が許さない。きっと、アリスもそう言うと思う」


「いや、アリスには何も伝えていない。伝えてなんになるわけでもない、アリスに重荷を背負わせるだけだから」


「………」


「……そうか。そう言ってもらえると助かる」


「分かったよ。とりあえず、ありがとう」


「リトル・アリスはまだ水煙草をやってるのか……」


「僕は今すぐにでもやめてほしいんだが?」


「頼むよ。健康でいてほしいんだ」


「そっちこそ元気で。親愛なるシャドウ・アリス」



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A3計画とはAgent Alice Againの略ではないのだ。


正しくは、


 Acquirements with Accustomed Alterations
慣例化された改変による取得……。

キャストとしての力 バランス調整
キャラクターの意思をコントロールする為のシステム


それがA3と呼ばれる物だ

 
作成日時:2021/07/15 20:27
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