164

【ショート連載】謎解きは玉手箱の中に・3話【wlw文芸部】

by
四天王FAL
四天王FAL
マメール裁判官「では静粛に。これより、闇吉備津殺害事件の初公判を行います。」
 
火遠理(さてさて、どうなる事じゃのう…)
 
 
 
ー前日・午前10時 火遠理宅ー
 
吉備津検事「火遠理ッ!、火遠理はいるか!
大変なことになったぞ!」
 
火遠理「そう慌てるなとて、検事。
急いだところで物事と言うのは……」
 
吉備津検事「そんな悠長なものでは無い、裁判長が殺人罪で拘留されたぞ!」
 
火遠理「なんじゃと!」
 
 
 
 
ー前日・正午過ぎ 拘置所面会室ー
 
フック裁判長「火遠理か、フフッ、普段は偉そうな事を言ってる俺もこのザマよ」
 
火遠理「性格は荒ぶっておるが、裁判長は曲がった事はせんはずじゃ、
良ければ話を聞かせてくれんかのう」
 
フック「うむ。
知っての通り、このワンダーランドでは、敵味方それぞれが共闘によって争う。
その際、味方キャストに攻撃が当たらないのは、味方に対しては悪意が無いからだ。
邪(よこしま)な想いがあれば味方キャストをも傷つけてしまう、それが今回の真意なのだろう。
 
確かに普段から「クリスマスを我と共に…」と宣う闇吉備津に苛立ちはあったが、自身でもヤツを傷つけれるほど悪意が溜まっていたとは…」
 
火遠理「とにかく、状況を詳しく話してくれぬかのう」
 
 
 
ー当日・午前9時 裁判所ー
 
マメール裁判官「では、検察側から、事件の概要をお聞かせください」
 
吉備津検事「心得たッ! 事の起こりは不思議の森にて、対戦中の闇吉備津殿が帰城に向かう際、
端で交戦中だったフック殿が『俺様の前に立つなぁ!』を森に向けて放ち、
それを被弾した闇吉備津殿が死亡したと言うものだ。」
 
マメール裁判官
「ではこの事件は殺害事件ではなく、事故との事では?」
 
吉備津検事「本来ならそうであるが、被疑者のフック殿がすぐに自首されたと同時に自らの罪も自白された事で話は一段落したと見ている。
 
ご存知の通り、このワンダーランドウォーズでは味方に対して攻撃が出来ない様になっている。
この摂理を崩すのは、味方に対して悪意があり、殺傷たる意思がある場合により、可能となる。
それすなわち、殺人の意思と同様だ。
被疑者がそれを認めた為、現行犯逮捕、現在に至る訳だ。」
 
マメール裁判官「確かに、チーム戦においては利敵行為とも取れますし、本来ならアカBAN等の厳しい措置になるでしょう。
ただ、真実を掘り下げてみて、罪に対して罰が適切かを見極めなければなりません。」
 
吉備津検事「では、被疑者であるフック殿の殺害状況を証言頂こう。」
 
 
 
フック「フッ、自身がこちら側に立つなどとは思わなかったが、人生万事塞翁が馬よな」
 
マメール裁判官「闇吉備津殺害を認めたとの事ですが、話としては事件性が薄いとも思われます。
それを確かめる為にも当日起こった事を供述願います。」
 
フック「もちろん、話させて頂こう。
 
あれば不思議の森のステージ、時間は覚えていないが、レベルは4だった。
 
レーン戦で追い上げられた俺は、拠点に押し寄せる敵を大兵士ごと処理する為にパンチを打った。
ちょうど壁から森の入口に向けてだ。
その時、何かにぶつかった様な衝撃を受けて、俺は跳ね飛ばされた。
立ち上がり、森に入ると闇吉備津が倒れていた。
体力が減り、帰城するタイミングの闇吉備津に攻撃を加えてしまったのだ。」
 
マメール裁判官「それでは事故と言う事ではないですか?」
 
フック「いや、裁判官殿。知っての通り、この世界は味方には攻撃は当たらん。
当てるには悪意があっての事だ。俺自身、闇吉備津の尻軽な行為に辟易してはいたが、
ヤツを殺害に至るまで知らずの内に
味方に来た者さえも心に悪意を持っていたのであろう。
 
事故でも故意でもそれが罪だ。
そう思い、すぐに自主したのだ。」
 
吉備津検事「状況は犯人の供述と一致し、疑いもない為、
フック殿を現行犯逮捕し、後は妥当な求刑に際しての判決のみとなっている」
 
マメール裁判官「わかりました。状況も実況見聞の通りで間違いない様ですし、自主するなど、減刑の余地もありますので、判決を出しましょ……」
 
 
 
「待つのじゃっ!」
 
 
吉備津検事(火遠理、この揺るぎない状況を打開できるか?)
 
 
マメール裁判官「静粛に。現在はまだ裁判中ですよ」
 
火遠理「まあまあ、裁判官殿。天網恢恢疎にして漏らさず、と言うが、
明らかに間違った供述は、そのまま流せぬのではないかのう。」
 
マメール裁判官「では、先程からの供述に誤りがあると?」
 
 
吉備津検事「裁判官、この者はいつくもの難事件を解いた実績があります。
これは裁判員裁判では無いが、明らかな間違いとなると一聞の余地はあるのでは?」
 
マメール裁判官「本来はあるまじきですが、認めましょう。
今の供述に間違いがあるのでしたら。」
 
火遠理「ありがたい」
 
 
ー当日 午前10時・裁判所ー
 
火遠理「では話させてもらおうかのう。
ちょうどフック殿もいる事じゃ、ワシの問いに答えて貰おうかの。」
 
フック「いいだろう」
 
火遠理「まず、フック殿が闇吉備津殿にパンチをお見舞いしたとの話じゃが、」
 
フック「ああ、それは間違いない」
 
火遠理「では、船長はパンチが闇殿に当たるのを目視出来たのかの?」
 
フック「いや、咄嗟の事でそれはわからん。
だが、何かにぶつかり、吹き飛ばされたので、
敵も離れていて周りに誰もいない状況から闇吉備津にブチ当たったのは間違いない。」
 
火遠理「そうかのう? 何故帰城する闇殿にぶつかれば吹き飛ばされるのじゃ?」
 
フック「それはきっとドローで移動していて、それに接触したのでは…」
 
火遠理「帰城するのにわざわざドローをするかのう。仮にしていたら、闇殿の声が聞こえるのではないか?」
 
吉備津検事「確かに」
 
火遠理「実況見聞の割には被疑者の供述の裏付けが出来とらんのう。
さて、そろそろ分かる頃じゃろうて。
裁判長、一人証人として読んでもらいたいものがおるのじゃよ。」
 
マメール裁判官「必要があらば認めましょう。
で、誰ですか?」
 
火遠理「お、ちょうど着いた様じゃ、
ではお願いするかの。」
 
 
ー当日 午前10時15分・裁判所ー
 
マメール裁判官「では、証人。自己紹介を。」
 
ヴァイス鑑識官「名前はヴァイス。
そこのチビに頼まれた科学判定を行って持ってきた。」
 
吉備津検事「科学判定だと?」
 
火遠理「本来は検察側で行うべきじゃが、間に合わないので昨日頼んだんじゃ」
 
ヴァイス鑑識官「ああ、だが、チビの睨んだ通り、闇吉備津の周辺からはトラップの痕跡と化学反応が出たぜ。
これが詳細だ。」
 
マメール裁判官「受理します」
 
吉備津検事「しかし何故、トラップなどと…」
 
火遠理「簡単じゃよ、フック殿が森の入口で吹き飛ばされたと言っておったろ。
本来、パンチはなぎ倒す側なのに、なぜ吹き飛ばされたのか?
状況を聞いても納得が行かないなら、
それが矛盾となる。」
 
マメール裁判官「では、逆に言えば、フック被疑者以外に事件の関与があると?」
 
火遠理「もし、そうなら、敵による撃破でも、端で戦う味方ファイターでも無い、中央の味方にでも聞けば良いいじゃろ?
では、出てくれんか?
傍聴席におるお嬢さん。」
 
マリアン「!?」
 
 
 
ー当日 午前11時・裁判所ー
 
マリアン「驚いたね、アタシの事を見破ってたのかい?」
 
火遠理「まあ、薄々のう。船長でも敵でも無いなら、必然的に絞られるからのう。」
 
マリアン「見事だね〜、今度はもっとうまくやらなくちゃね。」
 
マメール裁判官「まだ、状況が掴めてませんが、自供と言うのならお願いします。」
 
マリアン「簡単な事さ。
MP回りが良くなると闇吉備津に毒リンゴを持たせ、
ラウンド始めに森を通ってトラップを仕掛ける。
後はその森と反対で敵と交戦すれば、体力の減った闇吉備津が自ずとトラップの方に入っていくだろうしね。」
 
火遠理「船長はたまたま森の入り口でそのトラップの爆風に巻き込まれたんじゃろう。
しかしなぜ、闇殿に殺意を?」
 
マリアン「アタシの恋人ロビンの仇だよ。
ロビンはアタシの前で闇吉備津に斬り殺された。
その仇が今度は味方でマッチングして、『クリスマスをこの我と共に…』だなんて、ふざけてるよ!」
 
火遠理「確かに近接攻撃の強い闇殿に迫られれば、ロビン殿も厳しいじゃろうな。
それに、即コンテニューすれば、先程と同じ相手にマッチングする事もよくあるて。」
 
マリアン「だから毒リンゴを2つ用意したんだ。
 
1つは今回の犯行に、
…もう1つはアタシ自身の償いの為にね…」
 
火遠理「待つのじゃ、それではロビン殿への想いに反するのではないかの?」
 
マリアン「…え?」
 
火遠理「彼の言う『ジャスティス』とは、報復や殉死を望むようなものでは無い、もっと純粋な信念ではないかのう?
そうでなければサンシャイン池崎の様に、軽いジャスティスになってしまうんじゃないかの?

生前、ロビン殿は、『罪を憎んで人を憎まず』を地で行く様な潔白な生き方じゃったがのう。」
 
 
マリアン「……!
…負けたよ、あんたには。
確かに、残ったアタシがジャスティスを安っぽくしちゃダメだからね。」
 
 
マメール裁判官「何と言う事でしょうか。
事件の真相だけでなく、真犯人まで明らかにするとは?」
 
火遠理「船長の自供ばかりが取り上げられて、
矢を継がう者に対してアロー事か、事情聴取がなされなかったのが盲点じゃったのう」
 
吉備津検事「確かにそれは検察側の不手際だ。済まない。
だが火遠理、今回の事もお前で無ければ洞察出来ん事件だった。
礼を言うぞ。」
 
マメール裁判官「では今回の公判はここまで。」
 
 
 
ー同日 正午・裁判所ー
 
フック「すまんかったな、火遠理」
 
火遠理「なあに、真実を曲げたままの受刑など、あってはならんからの。」
 
吉備津検事「だが、今回の件で、実況見聞の穴も判った。
次は任せてもらいたい。」
 
火遠理「次はワシの出番が無く終われば良いのう。」
 
フック「難事件は汝、検事に任せるぞ、ファハハハ」
 
火遠理「明日どうなるかなど、ワシにもわからんよ。
今の自分を大切にするのじゃよ」
 
〜終わり
更新日時:2021/05/24 11:47
(作成日時:2021/05/24 11:35)
カテゴリ
火遠理小ネタ
コメント( 0 )
コメントするにはログインが必要です
シェア