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【ショート連載・2】謎解きは玉手箱の中に

by
四天王FAL
四天王FAL
フック裁判長「オホン、静粛に。ではこれより、竜宮の園殺人事件の公判を始めます。
ではまず検事、冒頭弁論をお願いする。」
 
吉備津検事「うむ、まずは…………」
 
 
 
火遠理(さてさて、どうなるかのう………)
 
 
 
 
~1時間前~
 
 
火遠理「わざわざ検事から頼みごととは、むず痒いのう。」
 
吉備津検事「火遠理、今回の事件、ありふれた概要とも言えるが、俺にはなにか合点がいかない。
被告人が余りに飄々としている。
まるで何かを隠そうとしているようなのだ。」
 
火遠理「その被告人とやらは誰なのじゃ。」
 
吉備津検事「今回の容疑者はマグス・クラウン。
その名の通り、道化師の風体に似つかわしい、つかみどころの無い男だ。
だが、奴は妙に素直に供述している。
まるで、筋書きがあるかのように」
 
火遠理「かえって怪しい、何かを隠しているのではないか、との事じゃな。」
 
吉備津検事「流石に理解が早い。火遠理は傍聴席にてそれを暴いて欲しいのだ。」
 
火遠理「よいぞ よいぞ。」
 
 
 
――現時刻・裁判席――
 
吉備津検事「うむ、まずは事件の概要を説明しよう。
場所は竜宮の園ステージのプレイタイム6:15、右森にて闇吉備津が殺害された。」
 
フック裁判長「またヤツか!」
 
吉備津検事「開始早々、敵キャストが森に逃げる闇吉備津を追うと、すでに殺されており、近くにいた味方キャストのマグス
・クラウンを逮捕、と言う流れだ。」
 
フック裁判長「死因は?」
 
吉備津検事「鋭いもので突かれた後があり、その傷による失血死であると断定される。
マグス氏が、ラージェホルン用の槍を持っており、これに被害者の血液が付着していたことから、容疑者としてマグス氏を現行犯逮捕、現在に至ると言う訳だ。」
 
フック裁判長「ふむう、味方殺しは重罪であるからな。」
 
吉備津検事「事件の真相は、容疑者しか知り得ぬ故、動機などは今からの質疑に委ねたい。」
 
フック裁判長「うむ、動機などは罪の軽重を問われる故、キチンと述べられよ。
では、マグス氏、お願いする。」
 
 
マグス「やれやれ……まるでピエロだよ」
 
吉備津検事(ピエロじゃないか!)
 
フック裁判長「では、マグス氏、事件の概要を述べられよ。」
 
マグス「そんな、かしこまらなくてもいいだろ。
犯人は僕さ。元々気に入らなかったんだよ。
彼はいつも、『クリスマスを、この我と共に』って女性の尻を追っかけてばかり。
品の無い男は制裁されるべきなのさ。」
 
フック裁判長「なんと、そんな私情で殺人を犯したと言うのか、貴様!」
 
マグス「僕のモットーは、世の中を楽しくする事だからねぇ、こう言う輩は世間に相応しくないのさ。」
 
フック裁判長「うむう、なんと身勝手な考えか。
ワンダーでは、仲間四人が共闘するのが本分。気に入らぬからと味方を殺めるなどとは言語道断。
これは明らかに重罪に処さなければならぬぞ。」
 
吉備津検事「まあ、落ち着かれよ裁判長。
判決は事件の真相を確かめてからでも遅くはあるまい。」
 
フック裁判長「うむ、しかし、被害者は死亡、犯人は森に一人では、目撃者もいないのではないか?」
 
吉備津検事「ハッキリとした目撃者はいない様だが、闇吉備津の対面で争っていたアタッカー・スカーレット女史に証言いただこう。」
 
フック裁判長「いいだろう、ではスカーレット女史、お願いする。」
 
 
★★★★★★★★★
 
スカーレット「あの日は、向かって左にファイター同士が、私とマリアンが中央へ行ったわ。
お互い中央サポーターの攻撃をいなしつつ、経験値を回収しあい、闇吉備津と私が小競合いをするも、マリアンのバフのおかげで有利になった私は、体力の減った闇吉備津が森に逃げるのを、少し待って追ったわ。」
 
吉備津検事「すぐには追わなかったと。」
 
闇吉備津「森は中が見えないから、容易に入るのは危険だし、マリアンも右のアタッカーのサポートに向かって離れてたから。」
 
フック裁判長「たしかに定石だ。」
 
スカーレット「敵サポーターもよってきてたけど、森には入らなかったので、余裕のある内に意を決して入った時には闇吉備津は死んでいたわ。」
 
吉備津検事「その時の様子は?」
 
スカーレット「闇吉備津の周りには経験値が散乱していて、私が回収出来たから、死んで間もない状況。
そばにはマグスが立っていたわ。」
 
吉備津検事「もし、闇吉備津を倒せるとしたら、君の仲間では可能だっただろうか?」
 
スカーレット「可能性なら、マリアンの弓か、端のメロウのドローだけど、
マリアンは逆サイドの援護、メロウはマグスとの競り合いで疲弊して回復に帰ったタイミングだから、私達だは無理だったわね。
 
近くの味方が誤射で殺めたのではないかと思うわ。」
 
フック裁判長「他に、何か気付いた点は?」
 
スカーレット「闇吉備津の傷は、なにか鋭利なもので貫かれた様な感じだったけど、近くにその様なものはなかったわ。
事件性を感じたので、すぐにアシェ警察を呼んだの。これがその時の写真よ。」
 
吉備津検事「何故あなたが写真を?」
 
スカーレット「自分視点の動画撮影用にカメラを持ち歩いているの。
今回は事件性があると思い、撮影したわ。」
 
フック裁判長「なるほど、では、犯行に使用された凶器は供述の槍、行えたのは同じ森にいたマグスで、動機も供述がある。
もはや疑いの余地はなく、犯人はマグスクラウン………」
 
 
『待つのじゃっ!』
 
 
 
 
フック裁判長「なにやつ、この公判に待ったを掛けたのは?」
 
火遠理「ちぃと、結論には早いようじゃのう」
 
フック裁判長「しかし、状況証拠はハッキリと残されている。
何もおかしな点は見当たらないが……」
 
火遠理「裁判長、それは、証言がすべて正しければ……の話であれば、だと思うがのう。」
 
フック裁判長「では、なにか偽証があったと言うのか!」
 
吉備津検事「裁判長、火遠理は傍聴席で一連の流れを把握している。
ここまで大きく出るのであれば、その不信な事柄もひとつ、聞いてみては?」
 
フック裁判長「これは陪審員制度ではないが、火遠理は、以前過ちを見抜いたと言う実績もある。
真実を曲げた痕跡があるなら、少し時間を与えよう」
 
火遠理「お主らには感謝せんとな。」
 
フック裁判長「では、そなたの主張を聞かせてもらおう。」
 
火遠理「まず、凶器のラージェホルンの槍じゃが、何故、兵士処理が得意なファイターが持っていたのじゃ?
相手にはスカーレットもいる。逆サイドはアタッカー、これなら、ファイターのマグスが狙われかねない。
マスタースキルは、自衛の為にエルガーグランツや、スターブリンクなんかをチョイスするんじゃなかろうか?」
 
 
マグス「ボクもボクなりの考えがあってね、大兵士の処理の為に備えていたのさ」
 
火遠理「それでも、ラージェホルンは歩きも早くないマグス殿が、メロウのドローを掻い潜って使うのは難しくはないかのう?」
 
マグス「むむむ…」
 
吉備津検事「何がむむむだ!」
 
火遠理「確かにマスタースキルを何を選ぶかは個人の判断じゃ。
仮にラージェホルンを選んだとしても、それで犯行には及ばんよ。」
 
マグス「おいおい、キミは冒頭の証言を聞いていなかったのかい?
 
闇吉備津に対してボクは良く思っていなかった。
そして、彼をラージェホルンで貫いた。
死体には、鋭利なもので突かれた後がある。ボクの弁護は有り難いが、もはや言い逃れが出来るものではない。」
 
火遠理「動機か…、怨恨では無くとも、誰かを庇っているのではないか?」
 
マグス「何をそんな…」
 
火遠理「そもそも、お主はラージェホルンを使わなかった、いや、使えなかったのじゃ!」
 
マグス「!!!」
 
フック裁判長「なんと! どういう事だ!」
 
火遠理「裁判長、犯行時間はいつじゃったかのう。」
 
フック裁判長「冒頭陳述によれば、6:15。」
 
火遠理「ラージェホルンは、その時間にはまだ使えないのじゃ。」
 
マグス「クッ……」
 
火遠理「ラージェホルンが使えるのは、6:00からじゃ。だから、マグス殿には犯行は行えなかった。」
 
吉備津検事「ではなにか? 火遠理、おまえは、マグスではなく、真犯人がいると言うのか?」
 
火遠理「マグス殿が詐証してまで庇っている誰か、それが事件の真相じゃ。」
 
フック裁判長「うぬう。そこまでわかっているなら、真犯人が誰かも察しているのだな?」
 
吉備津検事「一見、森には誰も侵入しておらず、対面のスカーレット女史がすぐに追ってきた、マスタースキルは使えない時間帯、レベルもせいぜいLv3と言ったとこか。
凶器も見つかっておらず、その様な犯行は可能だったのか?」
 
火遠理「スカーレット女史の現場写真にも写っておるじゃろう。
 
ここは竜宮の園。森には、沢山の竹が生えておるのう。」
 
マグス「ウッ、クッ…もうその辺で止めないか!
犯行はボクさ、それ以外に誰が出来る」
 
火遠理「おぬしは優しいのう。だが、真実を曲げてまで庇う事が相手の為にはならんぞ。
それは、重い足枷を一生引きずって行くようなものじゃ。
 
裁判長。今回の事件。中央にいたのは、敵はスカーレットとマリアン、味方は闇吉備津とマグスと……後一人。」
 
吉備津検事「近接アタッカーが経験値を拾いにいかねばならない後方型のサポーター……か。」
 
火遠理「さすがに味方の裁判であれば、傍聴席にいるであろう。
真相を握る味方サポーター、かぐや女史に話を聞こうかの。」
 
かぐや「!?………………」
 
 
 
★★★★★★★★★★★★
 
 
かぐや「……火遠理さまの噂は聞き及んでおりました。」
 
火遠理「むず痒いのう」
 
かぐや「事件のあの日、容疑者として検挙されたマグスさまに、面会で私が真相を伝え、名乗り出ることを告げましたが、
マグスさまは、『裁判の結果を見守っていろ、決して悪い様にはしない』と。
まさか、ひとり罪を被るおつもりでいらしたなんて………。」
 
 
フック裁判長「真実を、話していただけるかな?」
 
かぐや「鼠……です。」
 
吉備津検事「ネズミ?」
 
かぐや「あの時、わたくしは、兵士を処理しながら、中央拠点から森へ寄っていきました。
スカーレットさまの動きに気を付けながら、望月を闇吉備津さまにかけるつもりでした。
森の傍に差し掛かったところで……」
 
吉備津検事「ネズミが出た、と。」
 
かぐや「驚いたわたくしは、咄嗟に竹光の足枷を出してしまい、森では何かに当たる音が……、端のマグスさまが様子を伺って森に入ってからは、皆様の知るとおりでございます……。」
 
フック裁判長「なんと言うことだろうか。
真相は、不幸が重なった事故だった、と。」
 
火遠理「大山鳴動してネズミ一匹、と言う言葉がある。
山が動くほどの騒ぎも、原因は鼠が出た程度の小さな事だと言う喩えじゃが、
世の中と言うのは、案外そんなものなのかも知れぬのう。」
 
マグス「いいや、結局はボクの責任なのさ。」
 
かぐや「マグスさま………」
 
マグス「ボクが笛を吹くことでネズミを呼んでしまったのさ。
今回の事件、全ての発端はボクにある、彼女は被害者なのさ。」
 
火遠理「いたづらに みはなしつとも 玉の枝を 手折らでさらに帰らざらまし、か。
 
マグスどの、ピエロと言うのも辛い役じゃのう。
だが、後のことは検事たちに任せてくれぬかのう。
決して悪い様にはせぬゆえ。」
 
吉備津検事「かぐや殿は事故、マグス殿も殺人の疑いは晴れた。偽証の罪は免れぬが、情状酌量の余地はある。」
 
フック裁判長「では、ようやく真実を受け入れる事ができたな。
子細はまたおって沙汰を告げるとして、
今回はこれで閉会とする。」
 
 
★★★★★★★★★
 
 
吉備津検事「火遠理、礼を言うぞ、今回もそなたのお陰で、真実を突き止める事ができた。」
 
火遠理「月から放り出されたのがかぐや姫じゃが、
ツキに見放された訳ではないからのう。」
 
吉備津検事(うまいな)
 
 
スカーレット「マグス×かぐや、 これは捗るわね……」
 
火遠理「竜宮の園に生えておる孟宗竹の様に、そう言うのは、妄想だけにしとくんじゃぞ。」
 
吉備津検事「次も難事件の時は頼りにしているぞ。」
 
火遠理「明日どうなるかなど、ワシにはわからんよ。
今の自分を、大切にするのじゃよ。」
 
 
 
 
つづく?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
更新日時:2018/05/28 08:15
(作成日時:2018/05/22 12:25)
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