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スカーレットの相方

by
烏兎@Volksages
文筆
文筆
烏兎@Volksages





スカーレット。
赤ずきん組の唯一の特性として、移動中も持続するステルスフードを持つアタッカー。
別世界の"jungler"の単語が誰よりも似合いそうな妙齢の彼女は、初手から敵の森に飛び込み、裏回って戦うことも多い。
中央の戦いが最序盤から、独りで敵とまみえる事だって少なくはない──サポーターにとっても、他と違う考え方は難しい相棒だ。


「よろしくお願いね」
(……見た事のないスカーレットさん)

挨拶に頷き、挨拶を返しながら相手を見遣る。ダイヤの神筆使いを主に持つスカーレット。
赤いブレザーを身に纏う彼女と、同じく赤いブレザーの自分が並ぶと何だか二人だけ現代パロディのようだ。

「ドルミールは刹那選択サンキュー!」

刹那を選んだドルミールにNICEを放り投げたり、隣を通りすがるツクヨミが素足であることにちょっと価値観の違いを感じたり──そういえば俺もずっと飛んでるけど靴は履いてるんだよな──しながらも走り出した。





今回の相棒は分かりやすく森を駆け抜けていくから、ひとりになる覚悟はしていた。
しかし、向こうもそれを予期していたのか。刹那の側から出てきたドロシィと開幕早々刹那の森の入り口でまごまごしているマリク。マリクの所在を警告で伝えながら、初手からドロシィとふたりでお留守番のレーン戦だ。
……と思ったらマリクのダウンをしれっと奪い、裏から兵士を枯らしていたらしい。
風が敵の兵士の目の前を掠めて行くのがばっちり見られた上にドローに引っ掛かって大分恥ずかしい思いをする。
そのまま追撃を受けるとマズいか──そう思っていた処ドロシィが急に前のめりに倒れた。


「マリクは未だ彼方の森にいるから気を付けてね──」

スカーレットだ。背後から急襲してダウンを取ってくれたらしい。相変わらずのローテンションの声で、囁くように彼女は言う。
未だレベル1の攻防。ステルスフードは解禁されていないから姿は見えているのだけれど、どうしてか大きな声を出しちゃいけない気がして俺はこくこくと言葉なく頷いた。

そうしてもうひとつの森に飛び込んでいく。マリクが徒歩で後を追う。
諦めたかと思ったら、いつの間にかスカーレットが戻ってきていてマリクとドロシィのダウンを取ってくれていた。
その行動の読めなさがスカーレットの強みだ──それは分かっているのだけど、反撃で突き飛ばされてしまった相棒に僅かに風が届かない。

(凄いんだけど、反応が追っつかねえ)

追いかけるマリクを振り切る様に森に飛び込んでいく相棒を目で追いながら、少年は悩む。
スカーレットに巧く風を渡せないのが、ここ暫くの悩みなのだ。

(一番確実なのはハートレスシザーズの後隙の間に渡すこと、なんだけど)

変に身構えていると悟られてしまう。
かといって、此方も風を放っていたり銃片手に兵士処理している最中だとその後隙に合わせるのは簡単じゃない。
相方が近くに居ないかのように装い、振る舞い、控えめに立ち回る──望まれている動きは、無害そうに見える囮の羊と風を運ぶサポーターと、どちらなのだろう。

敵の兵士列に紛れてドローを描くドロシィに、スカーレットが飛び込んでいくのが見えた。
対面がいなくなるなら、さくさく兵士を拠点に運んで試合進行に貢献したい。スカーレットにこの場にとどまって兵士処理を手伝って貰うのはどうも惜しい。けれど、兵士処理を急くと風を渡すMPがやっぱりない……

「……ごめん」
「気にしないで、未だ次があるわ」

スカーレットの相方として、もうすこしやりやすいパートナーになるにはもう少し時間がかかりそうです。
 
更新日時:2023/01/23 19:14
(作成日時:2023/01/23 19:14)
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