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【wlw文芸部】白と黒の名

by
Fall_Lettuce
Fall_Lettuce

 狭く小さな七つのベッド。低く近しい木の天井。パチと燃える暖炉には火が灯り、また一度、パチ、と弾けた。
 
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 ここがどこなのか、わからなかった。目が覚めて最初に飛び込んできたのは白い少女、シュネーヴィッツェンの、どこか心配そうに私を見つめる傷だらけの顔。左頬につけたはずの真一文字の傷は、もう治りかけていて……。慌てて飛び起きる。そうだ、私は負けたのだ。この、ただの人間であるはずの者に。これが精霊の力か。これが黄金の林檎か。

「確かに……存在してはならぬ運命です」

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 私を殺しに来たという黒色の少女、シグルドリーヴァと名乗っていた。負けることはできなかった。勝てるとは思わなかった。ただ運が良かっただけなのかもしれない。精霊たちが力を貸してくれた。林檎が勇気を与えてくれた。生きるチカラが、私には備わっていた。
 
 シグルドリーヴァが飛び起きて最初の言葉は、それは辛辣なものだった。戦っているときにも、何度も聞かされた言葉。存在してはならない、それはどのような意味なのだろうか。少し考えて、けれども答えは出せそうにもなく、じゃあどのように言い返そうかと考えて。

「でも私は勝ったよ」

 返した言葉は、そんな自分でも勝ち気すぎると感じるものだった。

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 それもそうだ、と何故か納得してしまう。それはあまりにも自信に溢れた顔をしていたからか。それともその言葉が、あまりにも当たり前過ぎたからか。そう、私は負けたのだ。貴方に。

「そうですね。私は、負けた」

 神々からの命さえ果たすことができないまま。決して、人間風情と侮っていたわけではない。林檎の魔力は知らされていた。シュネーヴィッツェンの実力もわかっていた。だから私も全力で挑んだ。負けるつもりはなかった。負けることは許されなかった。
 けれどもそれは、相手も同じことだった。

「……どうすれば良いのでしょう」

 考えてもわからない。このままおめおめと天界へと逃げ帰り、神々に報告でもするのだろうか。それともこのままシュネーヴィッツェンの隙を伺い続け、その刹那を待ち続けるべきなのだろうか。わからない。だから、決してそれを尋ねる事のできる間柄ではないと理解はしているが、尋ねることしかできなかった。

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「そんなこと聞かれても、わからないよ」

 それが間違いなく本音だった。けれどもシグルも困っているのだろう。噂には聞いていた神々の戦士。子供の頃によく読んでいたあの冒険譚にも出ていたっけ。戦乙女の話は。まさか本当に存在するとは思わなかった。よもや、私を殺しに来るとは思わなかった。あの魔女は何も言っていない。知っていたのだろうか。そんな者が私の殺しにきて、けれどもできなくて……だから、困っているはず。

「でも、シグルも困っているのでしょ?」

 困っている人は助けなければならない。そうだよね。

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 まさかの言葉に耳を疑い、けれども相変わらずのその自信に溢れ、けれども優しげな表情にその言葉の真意を朧気に理解し、けれども混乱してしまう。そもそもシグルとは……私のことなのだろうか。私の名前はシグルドリーヴァ。神々から与えられた、勝利をもたらす者という意味がある、ほまれ高い名前。もちろん、シグル、なんて呼ばれたことは初めてでどのように反応すれば良いかわからず、呆気にとられてシュネーヴィッツェンの顔を見つめ続ける。

「シグル、とは」

 自分でも何を尋ねているのかわかりやしない。私のことを読んだのだ、名前を。

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「もちろん、貴女の名前だよ。シグルドリーヴァ。長いから、シグル」

 意味は知らない。戦乙女は神々から名前を賜るらしい。だからきっとその名前にも崇高な意味が備わっているのだろう。でも、ほら、長いんだもの。シグル、とよんだほうが呼びやすい。

「良いでしょう? シグル」

 少なくとも、私は気に入ってしまった。シグル。

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 シグル。そう、シュネーヴィッツェンは口にする。短縮された私の名前。意味するものは勝利。今の私の状況と正反対の言葉ではないか。

「……ふっ……ふふ……」

 笑っている場合ではないのかもしれない。

「あっ、ははっ!」

 そもそも、こうして笑ったことはない。でも何故かおかしくて、不思議と安心できて……。これもシュネーヴィッツェンの、人としてのチカラなのだろうか。造られてはじめて、笑った。

「良いですね、シグル。シグル。意味は勝利、なんですよ。シュネー」

 私の今の状況とは真逆ですね。なんて冗談を言ったのも、これが初めてだった。




 ----- 以下雑記 -----

コロナで仕事ができなくて暇だなー → なーんか適当に書くかー → そういやシュネシグル物語を妄想してたんだっけー
→ wlw文芸部とかあったなー ← イマココ  

あっ
http://slib.net/83304#chapter5
でも公開しておりますのでよろしければどーぞ

にしてもカテゴリはどないしよ。「イラスト・アート」が近しい気がするが違う気がするんだよなー
とりあえずはナシでいきますか



あれなんかデジャビュ
にしても前回もコロナ云々の話題を出してたってのにまだ続いてるのか……こわ

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♥♥♥♥
ころす
殺 す
殺/す

さてフィルターに引っかかるのは
更新日時:2020/08/19 12:06
(作成日時:2020/08/19 02:38)
コメント( 1 )
ルイマル NoWar
ルイマル NoWar
2020年8月20日 18時2分

こういうのは、出てくるキャスト全員のタグ付けとけば視聴数あがりますよ

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